あらすじ・解説『新感染 ファイナル・エクスプレス』時速300㎞の密閉空間が織りなす感動のゾンビ映画

制昨年    2016年         
制作国韓国
監督ヨン・サンホ
主な出演者コン・ユ
マ・ドンソク
チェ・ウシク
チョン・ユミ
上演時間118分
総合評価9/10

作品概要

ソウルとプサンを結ぶ高速鉄道の中で突如として発生した、謎のウィルスの感染拡大によって引き起こされる恐怖と混沌を描いた韓国製サバイバルパニックアクション。ソウルでファンドマネージャーとして働くソグは妻と別居中で、まだ幼いひとり娘のスアンと暮らしている。スアンは誕生日にプサンにいる母親にひとりで会いにいくと言い出し、ソグは仕方なく娘をプサンまで送り届けることに。ソウルを出発してプサンに向かう高速鉄道KTXに乗車したソグとスアンだったが、直前にソウル駅周辺で不審な騒ぎが起こっていた。そして2人の乗ったKTX101号にも、謎のウィルスに感染したひとりの女が転がり込んでいた。主人公のソグ親子のほか、妊婦と夫、野球部の高校生たち、身勝手な中年サラリーマンなど、さまざまな乗客たちが、感染者に捕らわれれば死が待ち受けるという極限状態の中で、生き残りをかけて決死の戦いに挑み、それぞれの人間ドラマが描かれる。韓国のアニメーション界で注目を集めてきた新鋭ヨン・サンホ監督が初めて手がけた実写長編映画で、今作の前日譚となる物語が長編アニメ「ソウル・ステーション パンデミック」で明らかにされている。

新感染 ファイナル・エクスプレス : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)

本作の反響 ハリウッドでのリメイクも

2016年に公開され、韓国国内で観客動員数1,156万人を記録した。

世界的にも高評価を受けており、カンヌ国際映画祭にも招待された本作は世界156か国から買い付けが殺到した。

作家のスティーブン・キング『パシフィック・リム』ギレルモ・デル・トロ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ジェームス・ガン等の名だたる映画監督からの評価も高い本作は、ハリウッドでもリメイク企画が進行しております。

ハリウッド版の監督には『KILLERS キラーズ』『ヘッド・ショット』でメガホンをとったインドネシア出身のティモ・ジャヤントが監督オファーをされているようです。

また、脚本には『アナベル 死霊館の人形』『IT/イット 』など、数々のホラー作品で脚本を手掛けてきたゲイリー・ドーベルマンを脚本に据え、『ソウ』シリーズの制作に携わったジェームズ・ワンをプロデューサーとして参加させる等、注目を集めています。

監督・キャスト

ヨン・サンホ(監督)

元はアニメーション監督として活動しており、韓国長編アニメ初のカンヌ出品作品となった『豚の王』、本作のプリクエルに該当する『ソウル・ステーション/パンデミック』が代表作にある。

初の実写監督作品である本作が大ヒットし、世界的な注目を集める映画監督となった。

2021年1月には続編の『新感染半島 ファイナル・ステージ』が日本でも上映された。

コン・ユ(ソ・ソグ役)

2007年のドラマ『コーヒープリンス1号店』の大ヒットにより人気を得る。作品がテレビ東京でも放送されていたこともあり日本国内での人気・知名度も高い。

代表作に『トガニ 幼き瞳の告発』(2011)や『男と女』(2016)がある。

2019年公開の『82年生まれ、キム・ジヨン』では本作にも出演しているチョン・ユミと共演している。

New Infection: Final Express (2016) (imdb.com)

作中ではファンドマネージャーとして多忙を極めるビジネスマン ソ・ソグを演じている。

すれ違いから妻と別れ、母と娘のスアンと3人で暮らしている。

上質な家に住み、アウディに乗る様子からファンドマネージャーとして成功しているようである。

別居中の妻に会いたいというスアンの要求に渋々応えるため、釜山行きの早朝列車に乗っていた際に騒動に巻き込まれる。

マ・ドンソク(ユン・サンファ役)

韓国系アメリカ人俳優。

代表作に『隣人 -The Neighbors-』(2013)や『犯罪都市』(2017)、『悪人伝』(2018)等がある。

韓国映画を中心に活動しているが、2021年11月公開予定のマーベル作品『エターナルズ』ではギルガメッシュ役での出演が決定している。

非常に強面であるが、韓国国内では「マブリー」(マ・ドンソク+ラブリー)と呼ばれる程の人気を誇る。

New Infection: Final Express (2016) (imdb.com)

本作にはユン・サンファ役で出演。

妊娠中の妻を庇いながら、他の生存者を助けようと身体を張る武闘派の頼もしい男を演じている。

ゾンビのいる車両に締め出された事でソ・ソグに苦言を呈し、彼のファンドマネージャーという仕事を”詐欺師”と罵ったが、後半では互いに協力し生存への道を模索した。

チェ・ウシク(ミン・ヨングク役)

韓国系カナダ人。2010年にカナダから韓国に戻り俳優としての活動を行う。

ポンジュノ監督の『オクジャ/okja』(2017)や『パラサイト 半地下の家族』に出演する等、韓国を代表する若手俳優である。

New Infection: Final Express (2016) (imdb.com)

本作では遠征で列車に乗った野球部の一員を演じている。

部のマネージャーのキム・ジニアン・ソヒ)と付き合っている。彼女の尻に敷かれ頼りない様子であるが、命懸けで彼女を守ろうと闘う姿には心を打たれる。

チョン・ユミ(ソンギョン役)

数多くの賞を受賞してる韓国を代表する女優。

ドラマ『ロマンスが必要2』(2012)や『ハケンの品格』のリメイク作品『オフィスの女王』(2013)に出演。映画の代表作には『トガニ 幼き瞳の告発』(2011)や『サイコキネシス -念力-』(2018)がある。

New Infection: Final Express (2016) (imdb.com)

本作ではサンファの妻を演じており、妊婦でありながら懸命にゾンビから逃げ惑う役柄を演じてます。ソ・ソグと反目する夫を窘める場面もありかなりの常識人です。

>次ページからの【解説】にはネタバレを含みます。

本作の見どころを解説 ※一部ネタバレあり

ゾンビとの肉弾戦

ゾンビは首の切断か頭部の破壊にて再起不能となる事がセオリーですが、本作にはそのような描写は一切ありません。

作中に銃火器やナイフは登場せず、あくまでも肉弾戦でゾンビと戦います。

New Infection: Final Express (2016) (imdb.com)

愛する人を救うため、9号車から13号車へゾンビの群れを縦断する場面ではリーチの短い素手やバットでゾンビたちと闘います。途中彼らの暗闇で目が見えないという習性に気づき、サンファの携帯を鳴らしてゾンビを引き付ける頭脳戦も見せます。

尚、サンファの着メロは日韓W杯でお馴染みの『オー、必勝コリア』でしたが、ソグに「幼稚だ」と指摘されてしまいます。

ホームレスがいる理由

釜山行きの急行列車に紛れこんだホームレス男性。

New Infection: Final Express (2016) (imdb.com)

彼は物語終盤まで生存し、主人公たちと行動を共にします。

なぜホームレスが?と違和感を感じますが、ヨン・サンホ監督は以下のように語っています。

『新感染』では、ホームレス以外の登場人物は、みなさん普通の人々ですよね。でも、その普通の人々も、政府のような公権力には関心を持たれていない。この映画には、公権力から無関心に扱われる一般の人々がいて、そこにも含まれないホームレスがいるわけです。一般の人々からすると、ホームレスは異質なもの。ゾンビでもないんだけれど、普通の人とも違います。そういう存在を、果たして一般の人々は受け入れられるのかどうか。受け入れる姿勢・態度を見せることによって、普通の人々が変化していくところを見せられると思ったので、ホームレスは重要な存在として描きました

『新感染 ファイナル・エクスプレス』ヨン・サンホ監督インタビュー 『哭声』から『アイアムアヒーロー』までゾンビ映画の源泉を明かす | SPICE – エンタメ特化型情報メディア スパイス (eplus.jp)

物語序盤でこのホームレス男性は”異質なもの”として差別される様子が描かれていました。

「勉強しないとああいう風になる」といった言葉を浴びせられ、主人公のソグも彼を見下したような態度をとります。

しかし終盤ではソグがホームレス男性を命の危険を冒し救う場面が描かれています。

これは独りよがりで自分勝手なソグの変化を示す場面として描かれています。

尚、このホームレス男性はソグに襲い掛かるゾンビに布を被せて逃げる隙を作ったり、最期はスアンとソンギョンを庇って死ぬという”人のために行動できる人間”として描かれていました。

彼の存在は社会的弱者に向けた無意識的な差別や無関心を風刺するような意図を感じさせます。

描かれる人間模様と主人公ソグの成長

作中で描かれる登場人物は“自分の事しか考えられない人間”と”自分以外を考えられる人間”に大別されています。

列車という密室空間での極限状態の中、誰もが自分の命を優先し他人を蹴落としてでも生き残ろうと躍起になっています。

特にバス会社の役員は自分が助かるために生存者を締め出したり、他人を犠牲にしてでも助かろうとする等、その傾向が象徴的に描かれていました。

主人公のソグもまた、当初は”自分の事しか考えられない”側のに人間でした。

お年寄りに席を譲るソヨンに「今はそんな事をせずに自分の事だけ考えろ」と諭したり、列車が大田駅で途中停車した際は顧客である軍人の個人投資家に根回しし、自分だけ助かろうとする等、自己中心的な行動が目立っていました。

しかし、騒動を通じて、他人を思いやり協力して危機を乗り越えようとする人間に成長します。

この成長は娘のスアンとの溝を埋め、親子の絆を構築する事に繋がりました。

ゾンビ映画なのに泣ける

本作はゾンビ映画であるにも関わらず「泣けます」。

“何があっても守り抜け”というキャッチフレーズの通り、極限状態で大切な人を守るため命を懸ける人々の姿には心を打たれます。

自らが犠牲になり14号車でゾンビを食い止めるサンファが、妻に娘の名前を告げるシーンは涙なしでは見れません。(この作品でマ・ドンソクがお気に入りになりました)

又、動力車の上でソグがゾンビ化したバス会社の役員と闘うシーンは本作のハイライトであり、自分勝手な彼の人間的な成長を象徴するシーンです。

娘のスアンのためだけでなく(他人である)ソンギョンも守るために必死に戦った彼はゾンビを振り落とす事に成功したましたが、腕を噛まれてしまいました。

自らがゾンビ化する事を悟った彼は、理性があるうちにソンギョンに列車のブレーキ操作を教え、スアンに遺言を残します。

そして号泣するスアンに別れを告げた彼は、彼女が生まれた日の事を思い浮かべながら列車から身を投げるのでした。

このシーンはお涙頂戴と分かっていながら号泣でした。

感想

密閉空間を上手く活かしたアクション性、ゾンビの演出・迫力とも非常に満足感がありゾンビ映画としても非常に完成度が高いです。

又、ヒューマンドラマという観点でも、登場人物が魅力的であるため容易に感情移入できました。子役の子も演技が上手です。

ゾンビ映画泣く日が来るとは、韓国映画恐ろしやです。

コメント

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