映画『運び屋』イーストウッド演じる”運び屋”の累犯と贖罪の物語

制作年2018年  
制作国アメリカ
監督クリント・イーストウッド
主な出演者 クリント・イーストウッド
ブラッドリー・クーパー
ローレンス・フィッシュバーン
アンディ・ガルシア
上映時間116分
総合評価9/10

1.作品概要

老齢でシナロア・カルテルの運び屋となり、長期にわたりコカインを運んだ園芸家のレオ・シャープという人物の実話に基づいた映画です。

2.登場人物/キャスト

アール・ストーン/クリント・イーストウッド

The Mule Pictures – Rotten Tomatoes

デイリリーの栽培で名をはせた園芸家であるが、インターネット販売を始めとする時代の変化に対応できず、農園を手放した。

仕事一途な人生のため家族中は悪く、娘のアイリスとは長年まともに口もきいていない。


メアリー/ダイアン・ウィースト:アールの元妻。家族をないがしろにしたアールを良く思っていない。

アイリス/アリソン・イーストウッド:アールの娘。デイリリーの品評会を優先し、自身の結婚式に出席しなかった事でアールを恨んでおり絶縁状態である。

ジニー/タイッサ・ファーミガ:アールの孫。家族で唯一、アールを気にかけ味方をしてくれる。


コリン・ベイツ捜査官/ブラッドリー・クーパー

THE MULE – Official Trailer – YouTube

DEA(麻薬取締局)の捜査官。トレビノ捜査官(マイケル・ペーニャ)/とコンビを組み、麻薬カルテルを取り締まるべく奔走する。


ラトン/アンディ・ガルシア

THE MULE – Official Trailer – YouTube

麻薬カルテルのボス。アールの仕事ぶりを評価し自らの屋敷に招待する程に信頼した。寄り道の多い自由奔放なアールの仕事ぶりに批判が集まった際も「成果が出ているなそれで良い」と寛大に擁護した。

3.あらすじ

園芸家のアール・ストーン(クリント・イーストウッド)は”デイリリー”というユリの栽培で名をはせており、その腕前は品評会で賞を受賞する程でした。

しかし仕事を優先する彼は家族関係をなおざりにし、妻のメアリー(ダイアン・ウィースト)とは離婚。娘のアイリス(アリソン・イーストウッド)とは絶縁状態にありました。

孤独になった彼は余計に仕事に打ち込みますが、やがてインターネットでの花の売買が台頭し主流となります。頑固者のアールは時代の変化に対応する事が出来ず、商売は破綻。家と農場が差し押さえられてしまうのでした。

Hakobiya (2018) (imdb.com)

行く当ても金も失ったアールは婚約中の孫娘ジニーの元を訪れます。ジニーは「何かあったの?」と祖父のアールを気遣いますが、元妻のメアリーや娘のアイリスは彼を拒絶します。

家族に拒まれ、家財道具を積み込んだ自身のトラックの前で立ち尽くすアールにリコという男が近づいてきます。リコはアールが仕事で全米中を走り回っていた事とこれまで違反切符を切られた事がない事を知ると彼にドライバーの仕事を紹介するのでした。

疑心暗鬼の中、渡された名刺が示すテキサス州エルパソのガソリンスタンドを訪れるアールでしたが、そこには強面で屈強なラテン系の男たちが待ち構えていました。

荷物を積まれ、言われるがまま届け先を指示されるアールは「中身は絶対見るな。ずっと監視している」と釘を刺されます。

Hakobiya (2018) (imdb.com)

怪しい仕事である事を察しながらも、アールは指定された場所に車を停車させます。そして指示通りに一定時間車から離れ、再び車に乗り込むと配達物と引き換えに大金が報酬として置かれているのでした。予想以上のその額にアールは驚きを隠せません。

大金を手に入れたアールはその資金を孫娘ジニーの婚約パーティに出資しました。

ジニーに感謝されアールは喜びます。そして元妻のメアリーとも久しぶりに会話をすることができましたが、「デイリリーの栽培と同様、家族も時間と努力が必要なのよ」と家族関係が破綻した原因を咎められてしまいます。


アールはその後も”運び屋”の仕事を続けます。それは自分が運んでいるものが麻薬カルテルのコカインである事を知った後も同様でした。アールは大胆でユーモラスな性格からカルテルの連中にも気に入られ、信頼を得て次々と重要な仕事を任されるようになります。報酬額も右肩上がりで上昇していくのでした。

アールは得た金で車を買い替え、自分の家と農場を買い戻しました。

コカインの運びを繰り返しながら、ジニーの卒業式に参加したりと崩壊した家族関係を修復しようと努めるのでした。

やがてアールは、”305kgのコカインの運び”と言う前代未聞の大仕事を任されますが、この頃にはカルテル内部の覇権争いによりボスのラドンが暗殺され、新たな指導者が組織を仕切っていました。その影響でアールの運びには厳しい監視が付き、時間通りにコカインを到着させなければ殺すと脅しをかけられます。

305kgのコカインの輸送中、アールの元に孫娘のジニーから電話が入ります。それは元妻のメアリーの危篤の知らせる電話でした。「最期に会いに来てあげて」と涙ながらにせがむジニーに対し、彼は「重要な仕事で行く事ができない」と力なく呟きます。

ジニーにも絶句されたアールはこれまで自分がこうやって家族を失ってきた事を思い知らされるのでした。

そしてアールは期日内にコカインを届けないと命がない事を承知のうえで、危篤状態のメアリーの元に車を走らせるのでした。そして死にゆく元妻の近くに居続け最期を看取るのでした。

アールの家族を想う献身的な行動を見た娘のメアリーはアールを許し、12年半ぶりに会話を交わすのでした。

Hakobiya (2018) (imdb.com)

家族との絆を取り戻しつつあったアールですが、重要任務中に1週間程姿を消した彼をカルテルの追手が血眼で探していました。

そして、ベイツ捜査官(ブラッドリー・クーパー)が指揮を執るDEA(麻薬取締局)もアールに迫りつつあったのでした…

4.感想 ※ネタバレあり

・衰えぬイーストウッドの魅力

まず、クリント・イーストウッド演じるアール・ストーンが非常に魅力的な男でしたね。

平然と鼻歌を歌いながらコカインを運び、銃で脅されても「俺は戦争に行ったんだ。お前など怖くない」と凄む等、非常に肝が据わっています。

しかし、女好きでデイリリーの品評会では貴婦人をナンパし、運びの仕事中にはモーテルにコールガールを2人も呼び朝までお楽しみ。口が悪いが、ジョーク好きでカルテルの強面な兄ちゃん達ともすぐに友達になってしまいます。

自身の監督作品でイーストウッドが主演を務めるのは『グラントリノ』(2008)以来という事もあり、本作のアールと『グラントリノ』のウォルトはよく比較されていましたね。

彼らは全く異なっており、ウォルトが”頑固者の偏屈じじい”だとしたらアールは”身勝手に人生を楽しむクソじじい”といったところでしょうか。笑

しかし、年老いてから”心情の変化”を経験するといった点では共通点があります。

・老人の累犯と贖罪の物語

本作では「家族の存在」がテーマとして描かれています。

家族を顧みず仕事と外の世界に生きてきたアールは家族に愛想を付かされていました。そしてひょんな事からコカインの運び屋となります。

そして罪を重ねながら、家族などお構いなしだったアールが徐々に家族の大切さに気付き、これまでの自分を反省し絆を修復しようとする姿が印象的でした。

90歳を超え、家族を大切にしたいという心情の変化=成長をみせたアール。人はいつになっても変わる事が出来るんだなという事を感じさせてくれます。

結局、アールはベイツ捜査官に逮捕されてしまいます。そして彼は裁判で弁護士の答弁を遮り、全ての罪を認め、懲役刑の判決を受けます。

判決をうけたアールに娘のメアリーや孫のジニーが駆け寄り、彼を気遣うねぎらいの言葉をかけました。アールは犯罪者となりましたが、最後は家族に囲まれていたのです。

獄中の刑務作業中にデイリリーを見つけるアール。彼の眼差しにデイリリーのような”遅咲きの幸福”を見たような気がします。

Hakobiya (2018) (imdb.com)

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