映画『ザ・ハント』解説 社会風刺に富む問題作!?

制作年2020年
制作国アメリカ
監督クレイグ・ゾベル
主な出演者ヒラリー・スワンク
ベティ・ギルピン
エマ・ロバーツ
上映時間89分
総合評価6/10

1.作品概要

富裕層が娯楽として行う”人間狩り”をテーマにした作品。

本作の作品内容に政治的風刺要素が含まれると、アメリカ本国で物議をかもした。(後述)

監督は『コンプライアンス 服従の心理』(2012)や『死の谷間』(2015)のクレイグ・ソベルが務めた。

2.登場人物/キャスト

クリスタル・クリーシー/ベティ・ギルピン

The Hunt (2020) (imdb.com)

本作の主人公。狩られる側であるが、アフガン戦争に従軍してた経験があり戦闘力に長けている。

クリスタル役を演じた ベティ・ギルピンはテレビドラマを中心に活躍しているが、『僕のワンダフル・ジャーニー』(2019)等の映画作品にも出演している。


ヨガ・パンツ/エマ・ロバーツ

The Hunt (2020) (imdb.com)

森の中で猿ぐつわをされた状態で目を覚ます”狩られる側”のひとり。

ジュリア・ロバーツの姪として知られるエマ・ロバーツが演じた。


ドン/ウェイン・デュヴァル

The Hunt (2020) (imdb.com)

“狩られる側のひとり”後半まで生き残る主要キャラ。


アシーナ・ストーン/ヒラリー・スワンク

The Hunt (2020) (imdb.com)

“狩る側”である秘密組織マナーゲートの主要人物。

自身も8か月間の訓練を受けており、戦闘力に長けている。

演じたのは『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)でアカデミー賞主演女優賞を獲得している名優のヒラリー・スワンク

3.あらすじ

広大な森の中で目を覚ました12人の男女。

「ここはどこなのか?」誰も状況を理解できない中で、無造作に設置された木箱の中からは1匹の豚が現れ、大量の武器が設置されていました。

The Hunt (2020) (imdb.com)

突如銃声が響き渡り、彼らは何者かの襲撃に遭います。訳も分からず逃げまどう男女でしたが、森に張り巡らされたトラップや弓矢等の攻撃で彼らは次々と命を落としていきます。

彼らは知らぬ間にセレブが娯楽目的で一般市民を狩る「マナーゲート」と呼ばれる“人間狩り”に巻き込まれていたのでした。

絶望的な状況の中、 狩られる側の人間のひとり、クリスタル・クリーシー(ベティ・ギルピン)が反撃に出て、次第にマナーゲートを追い詰めます。

次第に明らかになる組織と人間狩りの目的とは…?!

4.作品解説

・マナーゲートの目的とは?

富裕層エリートが庶民を狩る目的の秘密組織である”マナーゲート”

実はこの組織、セレブ達がチャット内でジョークで創り上げた架空の組織だったのです。

しかし、このおふざけジョークがリークしてしまい”人間狩り”の噂は瞬く間に広がってしまいます。そしてチャット内の富裕層たちは世間の批判と懐疑にさらされるのでした。

チャットの関係者が地位を失っていく中、大企業の役員である アシーナ(ヒラリー・スワンク)も責任を問われ、辞任を求められます。

「人間狩りなんてただの冗談よ」と弁明する彼女ですが、庶民を”デプロラブル”(哀れな連中)と表現した彼女のチャット内での発言も問題視されており、彼女は地位を失います。

そして、地位を失った富裕層たちが、自分たちを陥れた庶民(チャットをハッキングした者や声高らかに彼らを批判した人間)を集め、復讐のため彼らを殺そうとしたのです。

The Hunt (2020) (imdb.com)

ジョークのリークにより、嘘の人間狩りは現実のものとなったのですね。

・クリスタルは本当に人違いなのか?

ターゲットとして、人間狩りの噂を拡散した12人が拉致されました。

アシーナと対峙した際、クリスタルは自信が拉致された理由を「皆の正義」というハンドルネームで”人間狩り”の噂を拡散したからであると知ります。

クリスタルは同じ州の同姓同名との人違いであると主張しますが、アシーナは彼女の話を信じす、両者は一対一のタイマンを繰り広げます。

ネット上で「クリスタルは本当に人違いなのか?」と議論がなされています。真相は作中でも言及されていませんが、クリスタルが人間狩りの噂を信じ、ネットで拡散するような人物に見えませんので個人的には本当に人違いなのかなと思いますね。

・ドナルド・トランプが作品に激怒!?

本作は「富裕層が庶民を娯楽として殺害する」という内容ですが、アメリカの深い政治的な分断を風刺している作品とも言われています。

“狩られる者”として拉致された人間は伝統的に共和党支持者が多い地域の住民たちです。

そんな保守層が目を覚ますと、リベラルな”エリート”たちに取り囲まれ殺害されていきます。

これを踏まえ、保守層は本作を「リベラル・エリートがトランプ大統領の支持者を虐殺していく様子を描いた映画だ」と批判したそうです。(トランプは共和党の大統領でしたね)

トランプ自身も自身のTwitterで下記のような発言をしています。

Liberal Hollywood is Racist at the highest level, and with great Anger and Hate! They like to call themselves “Elite,” but they are not Elite. In fact, it is often the people that they so strongly oppose that are actually the Elite. The movie coming out is made in order to inflame and cause chaos. They create their own violence, and then try to blame others. They are the true Racists, and are very bad for our Country!

リベラルを標榜するハリウッドは怒りと憎悪に燃える最悪のレイシストだ(中略)。近日公開予定の映画は社会に混乱をもたらすために製作された。ハリウッドは自らの手で暴力を生み出し、異なる思想の持ち主を糾弾しようとしている。ハリウッドは真のレイシストであり、我が国にとって害悪である。

@realDonaldTrump) August 9, 2019 ※現在はアカウント凍結

作品名についての言及は避けていますが、現地メディアは本作に対する批判であると解釈し報道していました。

真偽は分かりませんが、狩られる側の人間に白人しかいなかったのも意味ありげに感じてしまいます。

5.感想

「社会風刺画に富む問題作」と推されていますが、個人的にはブラックユーモアの効いたコメディ要素のあるサバイバルアクションといった感想です。

確かに民主党と共和党の分断を感じさせたり、やジョージ・オーウェルの『動物農場』を引き合いに出す等、政治的な風刺を思わせる描写もあるのですが、本作はそこまで小難しく考えずに観たほうが楽しめると思います。

飛行機でのピンヒールで目玉をえぐるシーンや、明らかに主人公っぽい美男美女が開始早々で死ぬ展開から作品をコメディに寄せてきている感をひしひしと感じます。笑(とはいえグロ描写は多いです)

良かった点としては、作品を通じてベティ・ギルピン演じる主人公のクリスタルの魅力が光っていましたね。

戦闘力が高く冷静沈着。生存のために殺人にも躊躇がく、おまけに敵の罠も見破る頭脳を持ち合わせているまさに闘うヒロインのお手本のような存在です。

ラストのアシーナ(ヒラリー・スワンク)との肉弾戦はユーモラスな描写も含め最高でした。

The Hunt (2020) (imdb.com)

冒頭でも書いたよう、「社会風刺画に富む問題作」 という仰々しい煽り文句を前提に鑑賞すると少し肩透かしを喰らう気がします。

しかし、サバイバルアクションとして観るとラストの気持ちよさを含め、なかなか楽しめる作品だと思います。

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