【韓国映画】あらすじ・解説『お嬢さん』エロだけでない本質に迫る

制昨年     2016年
制作国韓国
監督パク・チャヌク     
主な出演者キム・テリ
キム・ミニ
ハ・ジョンウ
上映時間145分
総合評価9/10

作品概要

「このミステリーがすごい!」第1位を獲得したサラ・ウォーターズの小説『荊の城』が原作。

韓国国内で成人指定映画としては異例のヒットを記録し、2016年にカンヌ国際映画祭を席巻した本作は世界中でも称賛されました。

1939年、日本統治下の朝鮮半島が舞台の本作は、金と欲望を巡る壮絶な騙し合いが3部構成で繰り広げられています。

第1部と第2部では全く異なる見方ができる仕掛けとなっており、意図的に隠された真実が第2部で明るみとなる様子には度肝を抜かれます。

監督・キャスト

パク・チャヌク(監督)

ポン・ジュノと並び、韓国を代表する映画監督。

代表作に第57回カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した『オールド・ボーイ』(2003)、『親切なクムジャさん』(2005)、第62回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した『渇き』(2009)がある。

ミア・ワシコウスカニコール・キッドマン主演の『イノセント・ガーデン』(2013)ではハリウッドデビューも果たした。

キム・テリ(ナム・スッキ役)

Ojôsan (2016) (imdb.com)

劇団員として舞台で経験を積みながら、TVCM等に出演していた。

スッキ役には”無名の女優”を使いたい」という監督の意向で1,500名規模で開催されたオーディションの中から抜擢された。

長編初出演となった本作での演技が評価され国内外で数々の新人賞を獲得した。

キム・ミニ(秀子役)

Ojôsan (2016) (imdb.com)

韓国の女優・モデル。

宮部みゆきの小説を原作とした『火車 HELPLESS』(2012)に出演。

ホン・サンス監督『夜の浜辺でひとり』(2017)ではベルリン国際映画祭で主演女優賞を受賞。

公私にわたるパートナーであるホン・サンス監督作品に数多く出演しており、2021年6月には7度目のタッグとなった『逃げた女』が公開される。

ハ・ジョンウ(詐欺師 藤原伯爵役)

Ojôsan (2016) (imdb.com)

韓国国内で多くの映画、ドラマに出演。

近年では主演作の『神と共に 第一章:罪と罰』(2017)、『神と共に 第二章:因と縁』(2018)が国内での動員数が累計2,700万人を超える大ヒットとなった。

チョ・ジヌン(秀子の叔父 上月役)

Ojôsan (2016) (imdb.com)

韓国国内での歴代観客動員数1位の『バトル・オーシャン 海上決戦』(2014)や『毒戦 BELIEVER』(2018)に出演している。

あらすじ・解説 ※ネタバレ注意

第一部 

孤児であったスッキ(キム・テリ)は、自らを育てた詐欺師集団に所属しスリや乳児の人身売買で生計を立てていました。

ある日、藤原伯爵(ハ・ジョンウ)という男が彼女たちを訪ね、ある詐欺計画を持ち掛けます。

  1. 日本の華族の娘と結婚し「上月(コウヅキ)」という和名を名乗る朝鮮人がいる
  2. 上月の結婚相手は死に、莫大な遺産の継承権は姪の秀子が継承した
  3. 上月は姪の秀子と結婚し、遺産を手に入れようと目論んでいる
  4. その前に藤原伯爵が秀子を誘惑し日本に駆け落ちする
  5. その後、秀子を精神病院に入れ遺産を持ち逃げする

藤原は計画を円滑に成功させるため、秀子を世話する侍女(小間使い)を屋敷に送り込み、自分に秀子がなびくように仕向けたいと言うのです。

スッキは報酬を受け取る事を条件に計画に乗り、上月の豪邸に雇われます。

侍女となったスッキは“珠子”という日本名を与えられ、秀子に仕えるのでした。

スッキは彼女の美しさに戸惑いながらも、詐欺計画を悟られぬよう振る舞います。秀子はそんな彼女に対して自分の靴をプレゼントする等、優しさをもって接するのでした。

屋敷では、書籍の愛好家として知られる上月(チョ・ジヌン)が貴族を招いて朗読会を開催するのが慣習となっていました。

朗読会の読み手を務める秀子は、毎日決まった時間に上月のいる書斎に向かい練習に勤しみます。その場に立ち入る事は侍女であるスッキには許されませんでした。

ある午後、入浴中の秀子は「歯が尖っており違和感がある」とスッキに訴えます。

時間をかけてゆっくりと、指先で歯を削ってやるスッキに対し、秀子は濡れた眼差しを向けます。スッキもまた、美しく謎多き秀子に惹かれ始めます。そうして昼夜を共に過ごす二人は親密になっていくのでした。

Ojôsan (2016) (imdb.com)

この頃、絵画教師として屋敷に出入りするようになった藤原伯爵は着々と秀子との距離を順調に縮めていました。そしてある日、藤原は秀子に対し「日本に駆け落ちしよう」と告げるのでした。

Ojôsan (2016) (imdb.com)

求婚された秀子はスッキに対して戸惑いの気持ちを吐露します。

色恋の意味が分からない秀子は「男が求めているもの」をスッキに尋ねます。スッキはそんな秀子に身をもって教育してやろうと接吻し、身体を愛撫してやるのでした。

純粋で世間知らずの秀子を騙す事に良心の呵責を感じ始めたスッキは藤原に反発し始めます。

藤原はそんな態度をとるスッキに対し、「計画と目的を忘れるな」と叱責します。スッキは”金を稼ぎ韓国から出て自由に暮らしたい”という自分の目的を叶えるため、秀子への情を捨てるよう努めます。

ある夜、伯爵との結婚に悩む秀子にスッキは一方的に結婚を勧めます。しかし繊細な感情を逆なでされた秀子は怒り、スッキを部屋から追い出してしまいます。

悩みぬいた秀子は、スッキも連れていく事を条件に、藤原伯爵と日本へ駆け落ちする事を決心します。

日本に到着すると式をあげ、3人は旅館に泊まります。

藤原伯爵との初夜を終えた秀子の布団には血が滲んでいました。

その後、旅館の女将を監視に付けた藤原は遺産を現金化するまでの間、秀子を旅館に幽閉します。

大金を手にした藤原とスッキは精神病院に秀子を送り届けます。

神妙な表情で秀子を送り届けようとするスッキですが、精神病院のスタッフは秀子ではなく、スッキを院内に連れて行こうとします。

「私じゃなくあちらのお嬢様です」と秀子に顔を向けるスッキでしたが、秀子はスッキをじっと見つめ「私のお嬢様が狂ってしまった…」と呟くのでした。

藤原伯爵と秀子は裏でつながっており、スッキを精神病院に入れる計画を進めていたのです。

「騙したな!」と発狂しながらスッキは精神病院に入れられるのでした。

第二部 

第二部では秀子の幼少期から現在にかけてが描かれます。

早くに母を亡くした秀子は叔母(ムン・ソリ)の夫である上月に引き取られます。

上月は妻と秀子を恐怖で支配しており、二人は彼におびえた日々を過ごしていました。

上月は妻と幼い秀子に春画が挿絵された官能小説の朗読を強要する異常性癖を持ち合わせており、目の前で「おち〇こ、おま〇こ」と卑猥な単語を音読させました。

上月が催す朗読会の正体は”官能小説の朗読会”であり、自分の妻に読み手をさせていました。

しかし妻は庭園にある桜の木で首を吊って死んでしまいます。唯一自分に優しく接してくれる叔母の死に秀子は心を痛めるのでした。

成長した秀子は、叔母に変わり、官能小説の朗読会を担当する事になります。

秀子は朗読に類まれなる才覚を発揮し、時に小説内の描写を自らの身体で表現して見せるのでした。

Ojôsan (2016) (imdb.com)

熱の入った演技に魅了された聴衆に対し、上月は書物を高値で売却し金を得ていました。

スッキとの計画のために屋敷内に入り浸っていた藤原伯爵も朗読会を拝見しており、いつしか官能的な秀子の魅力に惹かれ始めていました。

そして藤原は秀子にある計画を告げるのでした。

  1. 当初はあなたを誘惑し、結婚したうえで財産を騙し取ろうとしていた
  2. しかし全てを白紙にする。あなたを上月の支配から自由にするので一緒に逃げよう
  3. その後、財産を山分けしよう

しかし、秀子は上月に植え付けらえれた恐怖に囚われています。

彼女は優しかった叔母の死因は自殺ではなく、財産目当ての上月に殺されていたという事に感づいていました。秀子は上月に逆らうと自分も殺されると考えていました。

藤原はそんな秀子に、もしもの時に、相手を殺す事のできる濃縮アヘンをプレゼントします。覚悟を決めた秀子は藤原の計画に乗る事を決意します。

秀子は逃亡後、社会的に自分の存在を抹殺できるよう身代わりを精神病院に入れた後に殺害する必要性を訴えます。そして自分の身代わりのため、「馬鹿で純粋な侍女を紹介しろ」と藤原に依頼をします。そして雇われた侍女こそがスッキだったのです。

秀子は何も知らない事を演じながら、馬鹿で純粋なスッキを監視し、藤原との計画を推進していきました。

しかし、秀子は自分を騙そうとしているスッキの心の葛藤や変化に気づき始め、彼女の純粋な優しさや献身さに対し好意を抱き始め、自らの計画に罪悪感を感じ始めます。

※第一部ではスッキが秀子に”色恋”をレクチャーする場面は簡潔に描写されてますが、第二章では二人の欲望が入り乱れるよう濃密なレズシーンとして描かれています

ある夜、藤原との結婚を勧めるスッキに対して秀子は激高しスッキを部屋から追い出します。

スッキが未だに自分を騙そうとしている事に傷つき、どうしたらよいか分からなくなった秀子は桜の木にロープをかけ、自殺を試みます。

首を吊った秀子のもとにスッキが駆けつけ、「藤原と結婚しないで」「死なないで」「私はあなたを騙そうとしていた」と泣きながら全てを白状します。

Ojôsan (2016) (imdb.com)

そんなスッキにため息をつき、秀子は「騙されていたのはあなたよ」と藤原との計画を白状するのでした。

お互いの罪を認め合う形となった二人は藤原を裏切り、手を組む事となったのです。

第一部のラストシーンでスッキは騙されたフリをして精神病院に入っていたのです。騙されていたのは秀子の横でほくそ笑む藤原だったのですね。

第三部 

スッキを精神病院に入れ、計画が無事成功した(と信じている)藤原は、日本のレストランで秀子に詐欺計画の仕上げについて語ります。

そして計画のためでなく真に秀子に惹かれ始めていた藤原は彼女にロシアのウラジオストクで暮らさないかと提案します。

一方、スッキが入院している精神病院では火災が起きていました。この火災はスッキの故郷の詐欺集団が関わる計画的なもので、スッキはこれに乗じて精神病院から脱出します。

秀子もまた、スッキとの計画を進めるべく、ホテルの別室に泊まっている藤原の部屋を訪ね、誘惑する振りをして濃縮アヘン入りのワインを飲ませます。そして気絶した藤原の元から逃げ出す事に成功します。

藤原が目を覚ますと、ホテルの部屋には上月の追手がおり屋敷の地下室に連行されます。

不気味な地下で上月から指を切り落とされる等のむごい拷問を受ける藤原。

異常性癖者の上月は、藤原に姪である秀子との初夜について詳細に語るよう命令します。

「タバコを吸えば思い出すかも」と言う藤原に上月は喫煙を許します。

上月は「どこから触った?」「感度は?」「締まりは?」「どのように濡れていた?」と変態的な質問を繰り返します。

Ojôsan (2016) (imdb.com)

勿体ぶりタバコを吸い続ける藤原ですが、秀子との初夜は何もありませんでした。

旅館での夜、「スッキを騙すため頑張りましょう」と言う藤原に体を許す事を拒否した秀子は布団の中で自慰をし声を出します。そして初体験を装うため、指をナイフで切りつけ布団を汚します。

※秀子とスッキはグルなのでこれは藤原の手先である旅館の女将を騙すための演技

「秀子の味はどうだった?」と鼻息の荒い上月に対し、藤原は「妻との初夜を言いふらす奴がいるか?」と囁きます。

その時、上月は異変に気付きます。藤原が吸っていたタバコには水銀が含まれており、気化した水銀を吸った上月は苦しみ、絶命します。拷問を受け続けた藤原も「ち〇ぽを守れて死ねてよかった」と呟きながら絶命します。

湿っぽい地下室で水銀中毒による最期を迎えた男どもと対照的に、計画を成功させたスッキと(男装し藤原を装った)秀子は上海行きの船上で微笑み合っていました。

Ojôsan (2016) (imdb.com)

新たに人生を歩む新天地に降り立った二人はお互いの身体を重ね、濃厚に抱き合うのでした。

感想

韓国人俳優が話す日本語について

本作では韓国人俳優が流ちょうな日本語を操っています。

これは撮影6か月前からひらがな・カタカナで基礎を固め、学習し準備した努力の賜物のようです。

韓国の俳優たちが日本語を死ぬ気で覚えて練習して長セリフにも挑戦しました。日本人の皆さんから見たら中途半端に見えるかもしれませんが、韓国の俳優たちが懸命に努力した姿を温かい気持ちで見守ってください

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パク・チャヌク監督は本作のジャパン・プレミアで上記のよう謙遜し語っていますが、日本人でも使用しない文学表現をロングテイクで流ちょうに操る俳優陣の努力にはただ脱帽するばかりです。

エロスの先にある本質

金と欲望を巡る男女の壮絶な騙し合いが繰り広げられる作品ですが、すっかり騙されながら鑑賞してました。それほどまでに見事に演出された作品でした。

第一部と第二部で全く違う表情を見せ、印象を演じた分けたキム・ミニの演技がとても印象的でした。

また、作中でAV顔負けのレズシーンがありますが、下品さは微塵もなく「女性の解放」という作品の本質を表現する非常に重要な場面に感じます。

Ojôsan (2016) (imdb.com)

1930年代後半という時代設定もあり、女性は男性に支配されている存在として描かれています。

これは藤原伯爵の言動や上月の妻や秀子への態度にも表れていますね。

そんな中、官能小説を朗読し男性の欲望の対象に晒され続けた秀子が、自らを苦しめた卑猥本を破り捨て、自由と本当の快楽へと旅立つ様子は男性の私から見ても痛快でした。

コメント

  1. […] 【韓国映画】あらすじ・解説『お嬢さん』エロだけでない本質に迫る…yosh… […]

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