映画『ゲット・アウト』解説・考察

制昨年2017年
制作国アメリカ
監督ジョーダン・ピール
主な出演者 ダニエル・カルーヤ
アリソン・ウィリアムズ
ブラッドリー・ウィットフォード
上映時間104分
総合評価8/10

作品概要

俳優・コメディアンとして活動をしていたジョーダン・ピールの初監督作品。

低予算映画であったが全米で大ヒットを記録し、アカデミー賞脚本賞等、多くのを受賞している。

批評家からも非常に高い評価を受けている作品である。

登場人物

クリス・ワシントン(ダニエル・カルーヤ)

Get Out Official Trailer 1 (2017) – Daniel Kaluuya Movie – YouTube

写真家の青年。交際5か月のローズの実家に挨拶に行く事となるが、自分が黒人である事をネガティブに捉えられないか心配している。


ローズ・アーミテージ(アリソン・ウィリアムズ)

Get Out (2017) (imdb.com)

クリスの恋人の大学生。彼女の実家訪問にナーバスになるクリスを優しく勇気づける。


右:ディーン・アーミテージ(ブラッドリー・ウィットフォード)

左:ミッシー・アーミテージ(キャサリン・キーナー)

Get Out Official Trailer 1 (2017) – Daniel Kaluuya Movie – YouTube

ローズの両親。父であるディーンは脳神経外科医。母のミッシーは催眠術を使用する心理療法士である。クリスの人種を気にする様子もなく、快く彼を自宅に招き入れた。


ジェレミー・アーミテージ(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)

Get Out (2017) (imdb.com)

ローズの兄で医学生。クリスに対する粗暴な言動を家族に注意される。

あらすじ

ニューヨークに暮らすアフリカ系アメリカ人の写真家クリスは、ある週末に白人の彼女ローズの実家へ招待される。若干の不安とは裏腹に、過剰なまでの歓迎を受けるものの、黒人の使用人がいることに妙な違和感を覚える。その夜、庭を猛スピードで走り去る管理人と窓ガラスに映る自分の姿をじっと見つめる家政婦を目撃し、動揺するクリス。翌日、亡くなったローズの祖父を讃えるパーティに多くの友人が集まるが、何故か白人ばかりで気が滅入ってしまう。そんななか、どこか古風な黒人の若者を発見し、思わず携帯で撮影すると、フラッシュが焚かれた瞬間、彼は鼻から血を流しながら急に豹変し、「出ていけ!」と襲い掛かってくる。

ゲット・アウト || TOHOシネマズ (tohotheater.jp)

解説と考察 ネタバレあり

本作は黒人を次々と誘拐するアーミテージ家からクリスが脱出するまでの恐怖が描かれています。

なぜ彼らは黒人を次々と誘拐するのか、登場人物の謎についても解説していきます。

アーミテージ家とは

アーミテージ家は黒人を誘拐し、富裕層の白人に黒人の身体を提供するという商売をしています。

目的は何でしょうか。

それは顧客である白人の脳を黒人の身体に移植するためです。年老いた富裕層の白人が”黒人の持つ身体的な健康と優位性”を切望しているため、この恐怖の商売が成り立っているのです。

クリスの訪問後に屋敷でパーティーが開催されますが、白人ばかりの客人たちはクリスに対し異常なまでの興味を示し、ゴルフのスイングを見せるよう頼んだり、クリスの肉体を確認するように触ったりします。

Get Out Official Trailer 1 (2017) – Daniel Kaluuya Movie – YouTube

これはパーティーの主目的である「クリスの身体のオークション」に向け、商品を吟味するための行動なのでした。


憐れな事にクリスは恋人のローズに騙されながら交際し、売買のために屋敷に連れてこられていたのです。黒人の身体の売買に際しアーミテージ家の人間はそれぞれ下記のような役割を持っています。

  1. ローズとジェレミーが黒人を誘拐してくる
  2. 母ミッシーが催眠術でターゲット(黒人)の身体の自由を奪う(動けなくする)
  3. 脳神経外科医の父ディーンが脳の移植手術を行う

ローガンの正体は?

Get Out (2017) (imdb.com)

白人だらけのパーティーに出席していた黒人青年のローガン。クリスは黒人である彼を見かけて親近感を覚えますが、年の離れた夫人と一緒にいる様子や年齢にそぐわない落ち着いた振る舞い。黒人特有のグータッチに握手で返す等の動作に違和感を覚えます。

なぜなら彼の中身は白人だからです。

彼は冒頭のシーンで何者かに誘拐されたアンドレ・ヘイワ―スという黒人青年でした。

Get Out Official Trailer 1 (2017) – Daniel Kaluuya Movie – YouTube

彼が誘拐されたのは女性と電話しながら郊外を歩いている時でした。誘拐犯はジェレミーという事が予想されます。

彼はその後拘束され、その身体に金持ちの白人男性の脳(パーティで連れ添っていた夫人の夫)が移植されたのです。

管理人ウォルターと使用人ジョージナの正体とは?

アーミテージ家には庭の管理人のウォルターとメイドのジョージナがいます。

「黒人の使用人を雇っている白人」といかにも人種差別時代的な構図ですが、彼らの正体は黒人の身体に脳を移植されたローズの祖父母なのです。

ディーンが家の中をクリスに案内する際、「父は陸上の短距離の選手だったが、ジェシー・オーエンスに及ばなかった」と話していました。ジェシー・オーエンスとは実在するアフリカ系の陸上選手です。「白人の肉体では及ばなかったオーエンスの記録に挑むため」と考えれば、夜タバコを吸いに外に出たクリスに全力疾走で向かってきたウォルターの行動の説明が付きます。

又、メイドのジョージナについては、屋敷から逃げ出したクリスを追う際、ローズが彼女を「おばあちゃん!」と呼ぶことから明らかです。

ローガンとウォルターは帽子、ジョージナはウィッグを身に着けていますが、これは脳移植の手術跡を隠すためです。

ジョージナの涙の意味は?

作中でジョージナが笑いながら涙を流すシーンがあります。

Get Out (2017) (imdb.com)

クリスの携帯の充電コードを(外部との連絡を遮断するため)彼女が抜いていた事を咎めますが、言い過ぎたかなと「パーティーの招待客が白人ばかりだから、僕はいらいらしているんだ」とクリスが弁明した直後に彼女は涙します。

これは考察ですが、白人の脳を移植された黒人の身体には潜在的に過去の記憶が残っているのではないかと思います。

ジョージナの涙はこれからのクリスを憂う感情ではないかと思われます。

又、カメラのフラッシュを契機にローガンが錯乱し、クリスに「Get Out !」(出ていけ!)と取りつかれたように叫ぶシーンがありますが、これもアンドレ・ヘイワ―スだった頃の記憶が呼び起され、クリスに危機を警告していたと考えられます。

随所で描かれる黒人差別的な描写 

本作では作中のあらゆる場面に過去の黒人差別の歴史を示唆する描写があります。

ひとつは”奴隷制時代のプランテーション”です。

ミッシーが催眠術に使用するのは紅茶のティーカップ。奴隷制時代、黒人はプランテーションで砂糖や紅茶、綿花の栽培に従事していました。

クリスが屋敷を脱出する際、耳栓をする事でミッシーの催眠術を防いでいましたが、自身が拘束されている椅子から取り出した綿花を使用していました。

Get Out (2017) (imdb.com)

又、クリスが車を奪い逃亡する際に助手席に鎧兜の仮面が置かれておりましたが、これはKKKの仮面を暗示しているように思えます。

更に、ローズの家に向かう際に警官が運転をしていないクリスに(黒人という理由で)身分証の提示を求めたりと、現代にも蔓延る黒人差別の現状も描かれています。

感想

クリスと同様に、アーミテージ家やパーティの客人、黒人の使用人に違和感と不気味さを感じながら鑑賞していましたが、その理由が徐々に明るみになっていく作品構成、その事実の恐ろしさ、俳優陣の演技。どれをとっても非常に完成度の高い作品でした。

いまだ蔓延る黒人差別に対しアプローチしながらも、重くなり過ぎないエンターテインメント性に富む作品を創り上げたジョーダン・ピールには脱帽です。

実家に向かう際にローズが人種差別的な警官を咎めるのを見て、「なんて人格者なんだ。この娘はええ子やで」と感心していましたが、後に行方不明者になるであろうクリスと一緒にいたという証拠を残したくなかったんだなぁ気づきました。

違和感を感じ、逃げ出そうとするクリスに怪しまれぬよう時間を稼ぐ様子、事実がバレた後の豹変ぶりは見事でした。とんでもない女です。

エンディングは脳を取り出される間際にアーミテージ家を殺害して脱出したクリスが駆けつけた親友のロッドに助けられるというハッピーエンドでしたが、当初はクリスが殺人の罪で逮捕されるというエンディングだったそうです。

当初のエンディングが採用されていれば、作品の感想や意義そのものも違ったものになっていたでしょうね。

コメント

  1. […] 解説・考察『ゲット・アウト』…yoshidanocinema.com2021.05.23 […]

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